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映画「ジュラシック・ワールド」のように足らない部分のDNAを加えて、新種の恐竜を生み出すことは可能なのか?
そもそも過去に実在していた恐竜を蘇らすことはできるのか?
新種の恐竜を生み出すには、まず過去に実在していた恐竜を蘇らせる必要がありますが、現在の科学技術では非常に難しいのです。恐竜を蘇らせるには、全遺伝子情報(ゲノム)をどうにかして採取しなくてはいけません。
米国人作家マイケル・クライトン(Michael Crichton、1942/10/23 ~ 2008/11/4)は小説「ジュラシック・パーク」の中で、恐竜の血を吸った蚊が閉じ込められた琥珀から恐竜のDNAを採取するという魅力的なストーリーを展開しました。
琥珀に内包された羽虫、弊社取り扱い標本
マイケル・クライトンの「琥珀のアイデア」は実践可能か?
確かに恐竜が生息していた時代の琥珀は存在しますし、内部に蚊を含む羽虫が内包されていることもあります。
代表的なものは、東南アジア、インドシナ半島に位置するミャンマー連邦共和国で採集されるバーマイトという琥珀です。バーマイトはおよそ1億年前の針葉樹の樹脂が起源とされているため、まさに恐竜が大地を闊歩していた時代のもので、内部に蚊を含む様々な虫や生物が内包されている標本が実在します。
蚊を内包する多数のバーマイトを収集し、一点ずつ分析していけば恐竜を復元することができる一連のDNAを発見することができるでしょうか?
現在のところ、答えは「NO」です。
虫としての外観が保たれていても細胞内の核に存在するDNAが読み取り可能でなければいけません。
琥珀に内包されたクモ、弊社取り扱い標本
恐竜の完全なDNAのセット(ゲノム)は今の所、見つかっていない
DNAの半減期は数百万年で、生物の復元に必要な情報が保存されている期間は100万年前程度とされています。恐竜が最後に生息していた時代がマーストリヒチアンと呼ばれる時代(約7200万年前から約6600万年前)であることを考えると、仮にDNAの痕跡が見つかったとしても、恐竜を復元可能な情報は保存されていないだろう、と思われます。
時折報告される、保存状態の良い化石から極めて古い時代のDNAが発見・採取された、というニュースがありますが、のちに分析の際に混入した現世の微生物のDNAだったなどと訂正される事が少なくありません。
これまでのところ、恐竜を復元可能なDNAは見つかっていません。
琥珀に内包されたヤスデ、弊社取り扱い標本
では、現世の鳥のDNAを組み替えて恐竜を作ることはできないか?
では、恐竜の完全なDNAを得られないとすれば、(一部の)恐竜の子孫とされる鳥など、現世の生物のDNAの一部を組み替えることで、恐竜を蘇らせることはできないでしょうか。
恐竜は爬虫類の一種で、その大半は絶滅しましたが、ごく一部の系統が現世の鳥へと進化したと考えられています。では、現世の鳥のゲノム(DNAの一通りの集合)から一部の遺伝子を組み替えることで、恐竜のゲノムを再現できないでしょうか。
例えば、今や一般に流通している遺伝子組み換え作物は、その好例です。乾燥に強い遺伝子をとうもろこしに組み込んだり、病気を引き起こすウィルスに耐性を持つ遺伝子を組む込むことで、収穫量を増やすことに成功しています。
また、大腸菌の遺伝子にヒトの消化酵素の遺伝子を組む込むことで、消化酵素を大量に生産する大腸菌を作り出すことに成功しています。現在の市販薬に含まれる消化酵素はその方式で作られているものがあります。
同様の考えで、鳥のゲノムを解析し、一部を変更することで、恐竜が作れるかもしれない、と思うかもしれません。
琥珀に内包された羽虫、弊社取り扱い標本
時間が無限にあれば可能かもしれない。
大腸菌のDNAの塩基対の数はおよそ数百万オーダーなのに対して、鳥やヒトなどの高等生物の塩基対の数は十億オーダーと桁違いの情報が含まれています。
その莫大なDNAのどこを並び替え、あるいは、何を組み込めばよいのか、地道に試行錯誤していく必要があります。
遺伝子を変更しては、鳥が成長するのを待ち結果を確かめる過程を繰り返し、徐々に恐竜に近づけていく流れになります。
もちろん、テクノロジーが進化し、実際に成長を待たなくても、成体の姿が分かるようになれば、大幅に時間短縮される可能性はあります。
まとめますと、恐竜を復元可能なほどフレッシュなDNAの採取は現在のところ難しく、設計図がない以上、恐竜のクローンの実現は無理ということになりますが、鳥の遺伝子を組み変える方法なら、途方も無い時間がかかりそうではありますが、可能性は残されています。
文責:ジュラ株式会社、藤田 大(ふじた ひろし)
未来の動物園
CG制作:ジュラ株式会社、藤田 大(ふじた ひろし)
未来の水族館
CG制作:ジュラ株式会社、藤田 大(ふじた ひろし)
こちらのコラムは、雑誌「映画大解剖シリーズ Vol.6 パニック映画大解剖」に寄稿した文章の簡易版です。詳しくは、同誌のp70「琥珀の化石から恐竜の再現はできるのか?」を御覧ください。発行:三栄。制作:開発社。
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