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化石の色はどのように決まるのか。メガロドン歯化石から探る。
皆さんは、化石の色について、こんな疑問を持ったことはありませんか?
・骨は本当は白いはずなのに、化石が茶色なのはなぜ?
・同じメガロドンの歯化石なのに、色が違うなのはぜ?
その疑問にお答えする前に、こちらの写真を御覧ください。
確かに、同じメガロドンの歯化石なのに、色が違いますね。
メガロドンの歯化石の色の違いについて
本来、サメの歯は白色ですが、なぜ、このように色違いになるのでしょうか。
絶滅古代鮫、メガロドンの歯もきっと白かったはずです。この白い歯がなぜ、様々な色に変化したのでしょうか。
結論から言いますと、「堆積物の色に影響された」からです。
まず、生物の遺骸が化石になる過程をご存知ない方は、コラム「化石のでき方を図で解説」を御覧ください。
生物の本来の骨が堆積物の色に影響される、分かりやすい例をご覧に入れましょう。
下記の写真はアメリカ合衆国中西部、ネブラスカ州の、モササウルスの発掘現場です。
本来、白色を呈していたはずの骨が、堆積岩の色である茶色と同化していることがお分かりでしょうか。
このような作用を置換(ちかん)、あるいはパーミネラリゼーションと言います。
パーミネラリゼーションとは?
水によって運ばれた鉱物が骨の内部に流れ込み、本来の成分と入れ替わり、最終的に沈着する現象のことです。遺骸が化石になる過程で多かれ少なかれ必ず起こる現象です。
遺骸は堆積が進むと脱水し、細胞に浸透した鉱物は再結晶化します。
まれに堆積岩と異なる色をした化石も存在します。なぜでしょう?
パーミネラルゼーションによって、必ずしも堆積岩と同じ色になるわけではありません。堆積岩と同じ成分に変化するなら色も同じになりますが、パーミネラルゼーションによって、本来の成分と新たに流入してくる鉱物が化学反応を起こした結果、堆積岩とは異なる成分へと変化することもあります。その場合、独自の色を呈することになります。
上で示したメガロドンの歯化石はその好例です。
歯冠のエナメル質は歯根(歯茎に埋まっていた部分)や骨とは異なる成分でできているため、パーミネラルゼーションによって独自の色を示す事が多い部分です。
以下のような様々な要因によって、最終的な色が決まります。
・生物の部位の本来の成分
・堆積岩に含まれる成分(鉱物の種類・粘土鉱物を多く含むかどうか)
・堆積中のPhのバランス
・堆積物の粒子の大きさ
また、地下水の影響も軽視できません。地下水に触れることで、化石からミネラルが抜けて、色が薄くなるケースや逆にミネラルを吸収し、色が濃くなる場合もあります。
メガロドンの歯化石を例に具体的な色を見ていきましょう。
■陶器の質感に似た滑らかで淡い色合い
頁岩層に埋まっていた歯化石は、粘土鉱物の影響を強く受けている可能性があります。粘土鉱物の存在は陶器のような透き通るような質感を与え、うっすらと青や緑、赤に近い色を呈することがあります。
■赤茶色を呈するケース
多くの場合、酸化鉄を多く含む地層に埋まっていた場合に見られます。いわばサビです。
■黒色を呈するケース
様々なケースがありますが、一例として、リン酸塩を多く含む堆積岩の中に埋まっていた場合、黒っぽくなります(フロリダのピース川層で採れたメガロドンの歯化石)。また、メガロドンの歯化石の例ではありませんが、ドイツ・ホルツマーデンやメッセルピットなどのように瀝青(オイル)を多く含む場合も黒っぽくなります。
基本的に化石が採集されやすい石灰岩と泥岩は、リン酸塩鉱物を含んでいますが、黒くならないケースもあります(米国・ノースカロライナ州のオーロラのプンゴ川層等)。メガロドンの歯化石の例ではありませんが、ドイツ・ゾルンホーフェンは典型的な白い石灰岩質の化石を産します。
■ 暗褐色を呈するケース
米国・サウスカロライナ州の河川にはタンニンが含まれていて、化石を緑っぽい暗褐色に染めます。メガロドンの歯化石の産地としても有名なサウスカロライナ州のブラックウォーター川などが典型例です。
■ 白っぽくなるケース
地下水に触れて歯の本来の成分からミネラルが溶出し、色が抜けた結果、白くなるケースもあります。あるいはパーミネラルゼーションの影響が弱いケースも同様に白っぽくなると考えられます。
まとめ
このように、化石の色は何百万年、何千万年という途方もない期間、堆積した地層の影響を受けています(本来の色を維持した化石のほうが圧倒的に少ない)。
この時、堆積岩の色が移るのではなくもともとの成分と堆積岩から流入する鉱物とが化学反応を起こし、最終的な色が決まる点に注意してください。ときには、もともとの成分からミネラルが抜けて白っぽくなるケースもあります。
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