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第8回、化石の魅力にとりつかれた人生
化石セブンさんにご縁を頂き、毎月一度「私流化石の楽しみ方」 というテーマをいただいて、現在までに7回のコラムを掲載させていただいた。なるべくテーマにそって化石とかかわる人々との交流などの話を中心に、化石の楽しみ方や様子などの話をしてきました。そして今後の執筆予定としては今回以外に残すところ2回の掲載となり、今回は化石の楽しみ方を超えた私の内面的な化石に対する想いを書きたく思います。
私の化石に対する想いは、化石を楽しむというよりは人生そのものなのです。少年時代、孤独で心閉ざした私の慰めは満天に輝く星空でした。毎夜はるか大空に輝く星を見るたびに心は癒され、空想の世界へと私を導きました。この空はどこまで広がっているのだろうか?瞬く星はいつからあるのだろうか?宇宙とは?私は何故この世に生まれたのだろうか?私はどこからきてどこに行くのだろうか?将来大人になりそして歳をとり消えていく、果たしてその後の世界はどうなるのだろうか?そんな想いの時が流れる中で、一人の化石を愛する恩師との出会いが青春時代にあり、現在の私があります。
少年時代に、いかにも幸せとは言えない境遇の上に立った色々な心の葛藤があり、孤独な時代を過ごした私の生きる道が、時空を超えた化石の世界へと誘ったのです。化石は知識とロマンを与えてくれる以外に、それ以上のものを悟らせてくれました。それは、私のこの世での存在感と生きる証、命の尊さ、人としてのなにを求めるか、何をすべきか、そして人として生きていく為の価値観など、自分なりの答えを明確に導き出してくれたのです。
また単に化石採集や収集が楽しいと考え、化石を物として見ればあくまでも趣味の領域から脱し得ないと私は思います。時を越えて目の前に現れた過去に命があり、今は石と化した化石をもとに過去や未来、そして無限に想い馳せイメージで時を超越するといかに人生80年といわれる人間が、自分が小さいかに気がつき現在目に写る世のもの以外のはるか遠くに視線を向けることが出来ます。そうすることで80年の人生の中で限られた以上のものを手に入れることが出来るように思います。
そして私達人間には空想する力、イメージをする力、作り出す力、応用する力、記憶する力などがあります。いかに専門的な勉強や研究をしていなくとも、時空を超えた化石という証拠との出会いがあると、そんなに的外れではないイメージがわきます。研究者の言う(仮説)に近いものだと思います。人は飛ぶ鳥を見て空に憧れ飛行機を作ったように、すべてのものは空想やイメージから出発し発展し形となると思います。その積み重ねが文化であり科学ではないでしょうか。しかしそれは人間だけが、便利さと幸福だけを追い求めた傲慢な進歩に他ならないと私は思います。科学進歩や機器発展が進めば確かに私たちは便利になり恩恵を受けます。大きな地球も小さくなってしまいます。しかしそのしわ寄せはどこかが受けているのです。それは動植物であり、自然であり、地球そのものなのです。こんな何かが犠牲になる空想から進歩しても、私は納得ができないのです。科学や文明の進歩が悪いと不定はしませんが、他にもっと大切なものがあるはずです。そしてその答えを化石が導き出してくれました。
時は過去現在未来へと流れ、未来はイメージしても私には限られた寿命があり、見ることはできません。しかし過ぎ去った過去は、自分が誕生してからのことは写真や思い出として残り、それ以前の過去は歴史で勉強できます。そしてそれ以上の太古のことは、化石を探索し自らの手によって発見、採集し、握り締めると心は一足飛びに時空を超越し、あたかもその世界で私が生きていたような錯覚にとらわれるのです。
そしてイメージは広がり、地球に生命が誕生したといわれる約40億年前、地球誕生の約50億年前、太陽系の誕生、銀河系の誕生、そして宇宙が誕生したといわれる約150億年前のビッグバンまで時空を過去へ過去へとさかのぼります。これがたとえイメージとしても色鮮やかに脳裏に浮かんだとき、私は人としてどう生きるべきかに気がついたのです。
もし本当に一円玉ぐらいの大きさに閉じこまれていた世界が、ビッグバンにより始まったのだったら、私も貴方も他の人達も、動物も、物言わぬ植物も、ビルも自動車も、海や陸も地球上に存在する全てのもの、太陽系、銀河系、宇宙にいたる全てのものは元をただせば一つなのです。すべて一つから始まり進化し、現在はあまりにも細分化され私たちには身の回りの現実しか見えていないのです。このはじまり、すべての原点が理解できたとき、私達がもっている欲望をわすれさり真の人間らしさを取り戻せ、全ての争いがない世界となり平和になり、私達の限られた寿命の中で素晴らしい宝を手に入れることができるのです。
大きなスタンスで考えましょう。
宇宙そして地球上に存在するもの、元をただせばすべて一つなのですから・・・。
そして私には、ビッグバン以前の世界はどうだったのか?が、今後に残されたテーマなのです。
カマヒレザメの歯 Hemipristis elongatus
新生代第三紀鮮新世・唐ノ浜層群・約360~180万年前・高知県安芸郡安田町産
パキディスカス・アワジエンシス Pachydiscus awajiensis
中生代白亜紀後期・和泉層群・約8000~7000万年前・兵庫県南あわじ市産
クサリサンゴ Halysites sp.
古生代シルル紀・横倉山層群・約4億年前・高知県高岡郡越知町産
ハチノスサンゴ Favosites sp.
古生代シルル紀・横倉山層群・約4億年前・高知県高岡郡越知町産