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- ウィドマンシュテッテン構造とはなにか?
ウィドマンシュテッテン構造とは?
上の写真はスウェーデンに落下した鉄隕石、「ムオニナルスタ」に見られるウィドマンシュテッテン構造です。
ウィドマンシュテッテン構造は、鉄隕石に見られる独特な模様で、大きな結晶が幾何学的なパターンを描くのが特徴です。これは主に、テーナイト(ニッケルを多く含む合金)とカマサイト(鉄を主成分とする合金)から成り立ち、隕石が宇宙で非常にゆっくりと冷却されることによって形成されます。鉄隕石を切断・研磨し、酸を用いた処理を施すと、この模様が浮かび上がり、美しい幾何学模様を観察できます。
ウィドマンシュテッテン構造が存在する鉄隕石の起源は?
上の写真はナミビア南部、ゴベブ(Gibeon)周辺に落下した鉄隕石、「ギベオン」に見られるウィドマンシュテッテン構造です。
ウィドマンシュテッテン構造が存在する鉄隕石は、巨大な天体の核部分が起源と考えられています。鉄とニッケルが結晶化し、極めてゆっくりと冷却される環境が必要です。その冷却速度は1℃以下/数百万年という非常に遅いものとされ、地上の環境では再現することはできません。このような環境が整うのは、主に惑星や小惑星の内部であり、大規模な衝突などで天体が分裂し、宇宙空間へ放り出され、最終的に地球に到達したものが鉄隕石です。
ウィドマンシュテッテン構造の処理、酸エッチングとは?
上の写真は米国アイオワ州に落下したメソシデライトに見られるウィドマンシュテッテン構造です。
酸エッチングは、ウィドマンシュテッテン構造を視覚的に浮かび上がらせる処理方法です。鉄隕石を切断・研磨した後、酸で表面を処理すると、鉄が主成分のカマサイト部分が酸に反応しやすく、黒っぽく見えます。一方、ニッケルを多く含むテーナイト部分は酸の影響を受けにくく、明るい銀白色を保ちます。この違いにより、テーナイトとカマサイトの境界が明確になり、美しいウィドマンシュテッテン模様が浮き上がります。
なぜ地上の鉄にはウィドマンシュテッテン構造が存在しないのか?
上の写真は米国ニューメキシコ州サンタフェ郡で見つかった「グロリエタ・マウンテン」隕石に見られるウィドマンシュテッテン構造です。
地球上では、ウィドマンシュテッテン構造のような模様は形成されません。これは、地上の鉄が高温から急速に冷却されるためで、鉄の結晶が非常に細かくなり、大きな結晶構造が作られないからです。地球の大気圧や冷却速度では、隕石内部で見られるようなゆっくりとした冷却が発生せず、結晶が成長する前に冷却が完了してしまいます。このため、ウィドマンシュテッテン構造は宇宙空間で冷却された隕石でのみ見ることができる特別な模様なのです