モロッコ4大化石産地をご紹介:時を超えた自然の遺産 | 恐竜化石に関するコラム【三葉虫,アンモナイト,サメの歯】

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モロッコは化石の宝庫

モロッコは化石の宝庫

モロッコは、北アフリカに位置し、化石の宝庫として世界的に知られる国です。特に古生代から中生代にかけての地層が豊富で、三葉虫や恐竜、さらには海洋生物まで、多種多様な化石が見つかっています。こうした歴史的な遺産により、モロッコは化石コレクターや研究者たちにとって憧れの地となっています。

上に示した模式図は、モロッコ内の主要な化石産地4つを示したものです。それぞれが異なる地質時代や環境を反映しており、多様な化石が発見されています。

ハイアトラス山脈 - 主に三葉虫や恐竜の化石が豊富で、古生代から中生代にかけての地層が広がる地域です。

ケムケム層群 - モロッコ東部に位置し、スピノサウルスやカルカロドントサウルスなど、白亜紀の恐竜化石が多く見つかることで有名です。

アルニフ - ティンギール州にある三葉虫化石の名所で、特にデボン紀の三葉虫が多く採集されています。

フェズアタ層 - ドラー・タフィラレット地方に位置し、オルドビス紀の海洋生物の化石が多く、保存状態の良さが特徴です。

ハイアトラス山脈 - 化石の宝庫

ハイアトラス山脈 - 化石の宝庫

モロッコ産の三葉虫の化石を集めている方なら、「アトラス山脈」という名前を耳にしたことがあるかもしれません。アトラス山脈は、北アフリカのマグリブ地域に位置し、サハラ砂漠と地中海、大西洋を隔てて広がる全長約2,500kmの山脈です。この山脈は、モロッコ、アルジェリア、チュニジアを貫き、最高峰はモロッコのトゥブカル山(4,167メートル)です。

特に、化石が多く発見される場所として「アトラス山脈」といえば、モロッコ中央部に広がる「ハイアトラス山脈」のことを指すことが一般的です。ハイアトラス山脈は西の大西洋沿岸から東のアルジェリア国境まで広がり、北アフリカで最も高いトゥブカル山やイギル・ムグン山(4,071メートル)などがそびえ立っています。

このハイアトラス山脈の地層には、古生代(約5.4億年前から約2.5億年前)や中生代(約2.5億年前から約6600万年前)の地層が豊富に存在し、さまざまな化石が見つかっています。古生代の地層からは三葉虫、中生代の地層からは恐竜の化石も発見され、この地域は化石の宝庫として知られています。

このように、ハイアトラス山脈は化石の多様性において特に重要な地域です。次に、ケムケム層群について見ていきましょう。

ケムケム層群 - スピノサウルスやカルカロドントサウルスの化石が眠る地

ケムケム層群 - スピノサウルスやカルカロドントサウルスの化石が眠る地

モロッコ東部のケムケム地域には、白亜紀後期(約1億4500万年前から約6600万年前)にさかのぼる「ケムケム層群」という地層が広がっています。この地層は、アトラス山脈の東側に位置するティンギールや南のタフィラルト地域に分布し、アルジェリアとの国境沿いに露出しています。

ケムケム層群は、古代の海底だったカンブリア紀やデボン紀の地層の上に堆積し、その後さらに石灰岩層が覆っています。主に淡水の河口や三角州が広がっていたこの地層には、多様な恐竜の化石が眠っています。

ここでは、水陸を行き来していたスピノサウルスや、頂点捕食者であるカルカロドントサウルス、アベリサウルス類といった恐竜の化石が発見されています。特にモロッコ産のスピノサウルスの歯化石などが有名で、この地域は化石ファンや研究者から注目を集めています。

このように、ケムケム層群は恐竜化石の豊富さにおいて特異な地域です。次に、アルニフの三葉虫の産地について詳しく見ていきましょう。

アルニフ - 三葉虫化石の有名な産地の一つ

アルニフ - 三葉虫化石の有名な産地の一つ

アルニフは、モロッコのティンギール州に位置する町で、古生代デボン紀(約4億年前から約3億6000万年前)から石炭紀(約3億6000万年前から約2億9000万年前)の地層が豊富に広がる地域として知られています。この地域では、特にデボン紀の三葉虫の化石が多数採集されることで有名です。

デボン紀には、進化した奇抜なフォルムを持つ三葉虫が現れました。三葉虫とは、古生代に繁栄した海生の節足動物で、そのユニークな形状が特徴です。アルニフ産の化石の中には、プロの職人による超絶技巧を駆使した見事な3Dクリーニング標本も見られます。

アルニフは三葉虫の化石に特化した地域として、研究者やコレクターにとって重要な地点です。次に、フェズアタ層について紹介します。

フェズアタ層 - オルドビス紀の上質化石を産出

フェズアタ層 - オルドビス紀の上質化石を産出

モロッコのドラー・タフィラレット地方に位置するフェズアタ層は、オルドビス紀(約4億8000万年前から約4億4400万年前)の極めて良好な状態の化石が発見されることで知られています。この時代は、海洋生物が多様化した時期で、さまざまな生物が繁栄していました。

この地域では、一大生物相が形成されていたと考えられ、約50種類の生物が確認されています。これらの化石は、沖合から海岸にかけて、深さ50メートルから150メートル程度の水深に棲息していた生物のものとされています。

一般的に、この地域の化石は平板状に押しつぶされた状態で見つかることが多いですが、中には完全に鉱物化していない、非常に保存状態の良い化石も含まれています。フェズアタ層は、オルドビス紀の化石の収集において特に注目されています。

最後に・・・

今回紹介したアルニフ、ケムケム層群、フェズアタ層はいずれもハイアトラス山脈周辺の地域に位置しています。これらの産地は地質的なつながりがあり、広義には全てがハイアトラスの範疇に含まれるといえます。この地理的な連続性が、異なる時代の多様な化石をもたらす一因となっており、モロッコが化石愛好家や研究者にとっての宝庫である理由ともいえます。

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