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獣脚類の歯の特徴と違い
ティラノサウルス、スピノサウルス、カルカロドントサウルス、タルボサウルス、アロサウルス、アルバートサウルス、ディロングなどいわゆる獣脚類の歯の化石は大変人気があります。
しかし、どれも比較的に似ており、区別が難しく、コレクターを悩ませます。
じっくりと見ると、大きな違いがありますので、ここで解説します。
1.産地で考える
産地は大きな手がかりです。カルカロドントサウルスは北米では産出しません。同じようにティラノサウルスはアフリカでは産出しません。
北米で産出するもの
ティラノサウルス
アロサウルス
アルバートサウルス
アフリカで産出するもの
スピノサウルス
カルカロドントサウルス
アジアで産出するもの
タルボサウルス
ディロング
このように産地だけでかなり絞り込むことが可能です。
2.年代で考える
化石の年代は産地の地層区分から推定が可能です。例えば、同じ北米産のティラノサウルスとアロサウルスですが、前者は基本的に白亜紀に活躍し、後者はジュラ紀に活躍した為、産出する層が異なります。もちろん、層が異なる、ということは北米の中でも、産地が異なる、ということになります。
3.形状で考える
最も単純で、強力な方法が形状から推測することです。例えば、スピノサウルスの歯は、魚を串刺しにするために発達した為、まっすぐで槍のような形状をしています。他の獣脚類の歯とは明らかに違います。
同じくアフリカ産のカルカロドントサウルスの歯は、ティラノサウルスなどの歯とやや似ていますが、それよりも薄くセレーション(ぎざぎざ)が一方に強く出る傾向にあります。また、産地の特徴から、やや土色がかった色合いの標本が多いです。ティラノサウルウスよりも比較的に巨大な歯が見つかりやすい傾向もあります。アフリカ産でこの手の歯の持ち主はカルカロドントサウルスに相当程度絞り込まれる為、同定もさほど難しくありません。
ティラノサウルスの歯の同定
一方、やや難しいのがティラノサウルスの歯です。この白亜紀後期の北米には、獣脚類が繁栄(むしろ全ての恐竜の最盛期)し、ティラノサウルス以外にも、ダスプレトサウルスやその他の小型の獣脚類などが多数存在していました。
一部の学者の間で主張されている小型のティラノサウルスこと、「ナノティラヌス」の歯が幼少期のティラノサウルスの歯にそっくりであることがさらにこの問題をややこしくしています。
そもそもナノティラヌスなる種が本当に存在したのか、大変怪しく、単なるティラノサウルスの幼少期なのではないか、という説も根強くあります(現在論争中)。
ただ5cmを超える標本については、少なくとも、小型の獣脚類ではないため、ティラノサウルスの歯である可能性が一気に高まります。
ティラノサウルスの歯は成長段階で変わる
ティラノサウルスの歯と一口に言っても、重要なのは彼らの成長段階によって歯の状態が変わる、ということです。寿命は完全骨格「スー」の研究から30歳前後であると考えられていますが、少なくとも20歳前後までは成長し続けたと考えられています。
すなわち20歳を超えると、実に巨大で立派な歯になりますが、それより低年齢、たとえば5歳程度であれば、ラプトルと比較してさほど変わらない程度の歯でしかないということです。
ティラノサウルスの歯は位置で変わる
また、歯の生える箇所によっても大きさは異なります。前歯は中程度、で奥歯は非常に小さく、その中間の歯は実に巨大です。
従いまして、仮に20歳の歯だとしても、奥歯であれば必ずしも、巨大であるとは限りません。他の小型獣脚類の最も大きい歯と区別が付きにくい可能性があります。
形状の観察が必要
その点から、ティラノサウルスの歯の同定については5cmを超える大きな歯は疑いはないとして、それ以下の歯については、上記の形状の特徴、セレーションや厚みを十分に考慮する必要があります。
慣れないうちは、同定は難しいのですが、よく見ると明確に違う為、同定にはティラノサウルスの歯を何度も見ている人間が行う必要があります。