化石というより骨董品。熱河省（ねっかしょう）産リコプテラ魚化石（Lycoptera Jeholensis Grabau） 化石 販売

こちらは中国熱河省産の魚、リコプテラの化石です。リコプテラ自体はそれほど珍しい化石ではありません。マーケットでもよく見かけます。しかし、この化石は一味違います。昭和８年５月1３日に藤田永次郎さんという方が発見された記録がオリジナルの書面として残された大変貴重な逸品です。良質な化石としての価値はもちろん、当時すでに化石が一般に販売されていたことを示す骨董品的な側面が残された品でもあります。

書面については後ほど触れますが、その前に化石をご覧いただきましょう。昭和８年に発見され、藤田永次郎さんが営む化石店で販売され、どなたに引き取られ、現在までに８５年の歳月が経過した品とは、とても思えない素晴らしい保存状態。きっと素晴らしい販売店、コレクターの皆様の手に引き継がれながら、こうしてたどり着いたと考えると感慨深いものがあります。おそらく、藤田永次郎さんが発見当時はもっと白っぽくて鉄分による赤化も無かったと思われますが、現在の姿も、大変美しく味わい深いものがあります。何より欠損がない点が大きい。

さて、この化石はパッケージに入っています。パッケージが残されている点が素晴らしいです。販売店の名称、そして当時の電話番号が残されているのが興味深いです。３８番。２桁で電話をかけることができたのでしょうか。いろいろ興味深い。

頭部、胸ビレ、腹ビレ。

背ビレ、尻ビレ。

そして尾ビレ。

大きく母岩を残したカッティングも時代を感じます。現在では最も小さくカットすることが多い。

裏には藤田化石販売店の刻印があります。これも現在ではあまり行われません。付属のドキュメントのなかに書かれているのですが、発見者が藤田永次郎氏とあります。販売店の名前も一致していることから、この方が中国で化石を発見し、そして日本人向けに販売していたものと思われます。

掘り出されて８５年。パーフェクトな姿で保存されています。

そして、こちらがドキュメントです。細かい文章の詳細については、新オーナーの方の特権ということで、伏せておきたいと思います。

少しだけ紹介。なんと藤田永次郎さんの上半身の着物姿付き。魚種は淡水魚という点は正しく、当時でもかなりのことが分かっていたようです。面白いのは地質年代のところ、「侏羅期」とあります。おそらく中生代ジュラ紀を指しているものと思われます。カタカナではなく当て字である点が興味深い。約５百万年前となっていますが、これは間違いです。地質年代についてはまだ研究が未発達だったのでしょう。化石の研究は現在でも日進月歩です。現在の常識は１０年後の非常識かもしれません。

化石についての説明がつらつらと書かれています。いくつかの教授の名前も掲載されています。

最も左の部分がまた面白い。「代金引換小包にてご送付申し上げます」と読めます。ということは、すでに通信販売が行われていたということなのでしょうか。

１００円玉との比較。数々の希少・貴重な書類とともに残されていた一片の化石標本。８５年前に最初にこの化石を販売した方、購入した方はもう存命ではないかも知れない。しかし、こうして化石は人の手を渡り、まだコレクターを喜ばせ続けています。ぜひ後世にこの標本と書類を残していただける新オーナーを募集いたします。大切にしてくださる方限定でお願いします。