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石になった足跡―へこみの正体をあばく
わが国では長い間、もっぱら骨や歯など体の化石の研究だけが進んできた。しかし、足跡化石が発見されていなかったわけではない。ごくわずかだが明石市からの偶蹄類、長崎県北松浦郡小佐々町からの偶蹄類、新潟県越路町からの長鼻類や偶蹄類、山形県新庄市からのツル類の足跡化石などをあげることができる。それがいまでは、国内の足跡化石産地は三九箇所にのぼる。著者は、この豊富な足跡化石を何とか研究し、標本を保存していこうと考え、平成3年(1991)に足跡化石を研究するグループ「滋賀県足跡化石研究会」をつくった。そして400万年の間に堆積した厚さが1500メートルにもおよぶすべての層のなかから何千という足跡化石を観察、発掘、研究している。しかし、その研究はたいへん難しく、いつも難問にぶち当たっている。その結論はいつでるかわからないが、これから足跡化石を研究してみようと思っている人たちとともに歩んでいけば、きっとすばらしい答えが出るであろう。本書では、その人たちにいままで著者が行ってきた調査・研究法の一端を解説している。
目次
第1章 不思議なへこみのある河原(宮沢賢治に導かれて―イギリス海岸に立つ 伝説の世界から科学の視野へ―足跡もどきか足跡か)
第2章 へこみの正体をあばく(足跡化石に魅せられて―古いカルテをひっくり返す 開化前夜ほか)
第3章 足跡化石を“診察”する(よりよい足跡化石を求めて―CTスキャンで足跡を診る 診察に先立ってほか)
第4章 診察室は動物園(抜き足差し足忍び足―ゾウのおなかの下にもぐる 足型も重要な鑑識資料―資料庫は宝の山)
第5章 足跡化石に出会うには(国内の主な足跡化石産地 国内で足跡化石がみられる主な博物館・資料館)