恐竜の骨のお話~全身骨格が組み立てられるまで~
みなさまこんにちは。
今日は恐竜の骨、とりわけ全身骨格ができあがるまでのお話です。
いきなりですが、人間と恐竜の骨の数はどちらが多いと思いますか?
やっぱり大きいから恐竜かな!?
そうです、正解です。
恐竜のほうが骨の数が多いんです。
成人の人間の骨はおよそ206個といわれています。
対して、恐竜の骨は化石になるときに見つからない、あるいはなくなってしまう
ものもあるので、正確には分かっていませんが、ティラノサウルスを例にすると
およそ300個あります。
小さな骨も合わせると350個くらいになるといわれています。
これが、竜脚類などの首の長い恐竜になると、数がまた違ってくるのですが、
恐竜のほうが人間よりも骨が多いのです。
博物館などで見られる、恐竜の全身骨格。
あれは、いったいどれくらいの時間で組み立てられているかご存知でしょうか?
全身骨格の約90%が見つかった、最大級のティラノサウルスで有名な
「Sue(スー)」という個体を例にしてみましょう。
1990年8月にアメリカのサウスダコタ州で、スーザン・ヘンドリクソンによって
見つかったティラノサウルス(後にスーザンの一部をとってスーと名付けられる)
は、12m強の巨大な骨格でした。
スーザンが、崖からティラノサウルスの背中の骨が突き出ているのを発見したのが
はじまりです。
最大のティラノサウルス発見のニュースは、当時世界中で飛び回りました。
スーは、オークションで日本円にして10億円という高値がついたことでも
有名です。
この巨大な恐竜ティラノサウルスの全身骨格の標本展示が長い間待たれました。
みなさん、この標本が展示されたのはいつだと思いますか?
何と10年も月日がたった後の2000年です。
場所はアメリカのフィールド自然史博物館です。
遅いじゃないか!?
と思われる方もいらっしゃるでしょうが、これでも頑張って10年なのです。
何と全身骨格展示に至るまでに、20人の技術者がつきっきりで3万時間もかかったのです。
なぜそんなに時間がかかったのでしょうか?
それは、化石が化石として世にお目見えするまでにはあまりに多くの過程を経る
必要があるからです。
化石は、大抵の場合、骨の一部などが崖の表面や地面にのぞいて見つかるようです。
ですから、骨の周りの岩を削り取ることから作業ははじまります。
骨から岩を削り取っていくのには慎重さを要しますから、時間がかかります。
そして、ハンマーやスコップなどを使って、手作業で岩から骨を掘り出すのです。
考えただけで、大変そうですね。。。
相手は12m強の大きな恐竜ですから、腰や尾の骨だけでも巨大で重い。
しかも世紀の発見ですから、失敗が許されません。
さぞかし緊張感に満ちた現場だったことでしょう!
博物館に持ち帰られた化石たちは、今度はクリーニングという作業が待っています。
クリーニングとは、化石についている岩石をきれいに取り除く作業のことです。
このクリーニング作業によって、発掘された化石は綺麗になって
化石の全貌が明らかになっていきます。
クリーニングは、歯医者さんが使うようなドリルを使います。
スーほどの大きな恐竜ともなると、来る日もくる日もこの作業をつづけ、
かかった時間は何と2年!削りの作業だけで2年も要したのです。
ちなみに、頭の部分は4人の技術者がかかりっきりになって
6ヶ月もかかりました。
この頭骨が重い!335kgもあり、移動するのも一苦労です。
やっとクリーニングが済んだら、こんどは組み立てです。
ばらばらだった骨をつなぎ合わせていくのです。
骨を順番に並べていき、それに合わせて展示できる頑丈な金属のフレームを制作して・・・。
と、いう具合に作業はまだまだあります。
見つからなかった骨はどうするか?
それは他の見つかっている化石をもとにして、新たに作って補います。
考えるだけで、気の遠くなるような作業を経て、やっと全身骨格標本が出来上がるのです。
250個以上の骨を緻密に組み上げていき、全長12.5mのスーが出来上がったというわけです。
発見から展示まで10年の歳月がかかった!?
うん、納得です。
化石が化石として鑑賞に値するものになるまでに、人の手と膨大な時間が
かかっているんだな、ということをスーの例で改めて感じられます。