恐竜の分類からみたテリジノサウルスの不思議  

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 カテゴリ:化石ニュース 作者:

テリジノサウルス類の巨大な営巣地が発見された、とのニュース。お聞きになったでしょうか。ここでは、テリジノサウルスの不思議な体魅力についてお話ししたいと思います。

はじめはカメに間違えられた!?

テリジノサウルスの種小名はcheloniformis というのですが、これは「カメのような姿の」と言う意味に由来します。はじめに発見された化石が、巨大なウミガメに似ていてカメのような姿に復元されたということです。恐竜化石がカメらしき姿に復元されたという逸話。これは、テリジノサウルスがもつ、異様で巨大なかぎづめがもたらしたものといえるでしょう。

まさかのカメに間違えられた!?

まさかのカメに間違えられた!?

それにしてもテリジノサウルスは8~12mの全長に比較して、爪の長さが約70cmあるといいます。腕の長さをいれるとおよそ2メートル。どう考えてもアンバランスな体型をしています。

はじめてテリジノサウルスのイラストを見たときは、おもわず吹き出してしまった方も多いのでは。私もそのタイプで、恐竜図鑑などでテリジノサウルスを見たときは『なんだ、この巨大な爪は!?』と、思わず突っ込みをいれてしまいました。

この巨大なかぎ爪は、未だ用途ははっきりわかっていないようです。爪の役割について、今のところ考えられているのは①獲物を切り裂いたり、自らの身を守った ②木の根を掘ったり葉を切ったりした ③地中を掘り起こして昆虫を食べた などなど。

ここからもわかるのですが、テリジノサウルスが植物性か肉食性か、はたまた魚食性か、未だはっきりとは分かっていないようです。歯やアゴの化石からすると、草食恐竜の特徴を持っているので、植物を食べるのに適している形とのことですが、直接的な証拠はないようです。

分類されにくい恐竜

テリジノサウルスに謎が多いのは、爪や食性だけではありません。分類においてもそうです。

テリジノサウルスの体型は、長い首と腕、そして異様な長さの爪、太い胴体に特徴づけられます。分類は『竜盤(りゅうばん)目』に属しています。あの恐竜キング、ティラノサウルスと体格は似ているといったら言い過ぎでしょうか。テリジノサウルスは分類上、竜盤類です。しかし、体の一部は鳥盤類に似た特徴をもっているという、摩訶不思議な生き物です。

ティラノサウルス(化石セブンオリジナルCG)

ティラノサウルス(化石セブンオリジナルCG)

さて、恐竜の分類については、大きく分けて鳥盤類(ちょうばんるい)と竜盤類(りゅうばんるい)があります。鳥盤類で代表的なのは、ステゴサウルス、トリケラトプスなど。竜盤類で代表的なのは、ブラキオサウルス、ティラノサウルスなど。前者は植物食で、後者は植物食と肉食両方存在します。

ケントロサウルスも鳥盤類

ケントロサウルスも鳥盤類

鳥盤類と竜盤類という分類は、『盤』という言葉からも想像できるように、恐竜の骨盤の形によってカテゴライズしたものです。鳥盤類は、骨盤のつくりが鳥の形に似ていることから名づけられています。そして、竜盤類は、骨盤のつくりがワニやトカゲに似ていることから名づけられています。

竜盤類はワニに骨盤のつくりが似ている。

竜盤類はワニに骨盤のつくりが似ている。

骨盤を形成する、腸骨(ちょうこつ)、坐骨(ざこつ)、恥骨(ちこつ)のうち、恥骨が後ろに伸びて向いているのが鳥盤類、恥骨が前に伸びて向いているのが竜盤類です。鳥盤類の場合、草食性の恐竜ばかりですので、恥骨が後ろ側(しっぽ側)にむいているほうが都合がいいようです。というのも植物食の場合、大量の植物を消化したいので、長い腸が必要です。恥骨がお腹側にないことで、長い腸を無理なく収められたのではないか、というのです。

さて、テリジノサウルスは、竜盤類であるので、通常なら恥骨が前に向くはずにもかかわらず、後ろを向いていて、この部分においては鳥盤類の特徴をもっています。さらに、骨に温血動物がもつ特有の構造をもっているなど、鳥類や哺乳類に近い性質もあるようで、謎はますます深まるばかりです。

見た目も不思議、体のつくりも不思議、食性も不思議。これだけインパクトのある恐竜もなかなか珍しいですね。今回のゴビ砂漠での巨大営巣地発見を機に、テリジノサウルス類のさらなる生態の解明が期待されます。