鉤爪(かぎづめ)にみる生き残りの知恵
先日のニュースで、アメリカユタ州で発見された、新種の恐竜の研究報告がされました。
約7600万年前、白亜紀に生息した、ラプトル類の一種です。
後ろ肢の第二肢にするどい鉤爪をもっている、体長2mの小型の肉食恐竜です。
名前は「タロス・サンプソニ」と名付けられたそうです。
昨日のお話ではありませんが、この恐竜も“ひょうたんからコマ”の発見だったようで
2008年、亀の化石を探索中に、たまたま恐竜の化石を見つけてしまったとのこと。
新種の獣脚類と分かるやいなや、研究者たちはさぞ驚いたことでしょう。
さて、この新種のタロス・サンピソニという恐竜、私たちにまた恐竜の生態を知らせてくれる
メッセージを残してくれたようです。
それは、鉤爪の役割りについてです。
小型の肉食恐竜の一番の特徴は、後ろ肢に大きくて鋭い鎌のような鉤爪
(キリングクローともいいます)を持っていたことです。
今回見つかった鉤爪は、一度完全に折れていたというのです。
これを詳しく調べたところ、外部からの圧力によるものか、敵に襲われ噛み付かれた時
に折れた可能性が高まりました。
しかし折れた部分の骨以外は目立った損傷なないのです。
このことが指す意味は、後ろ肢の鉤爪は、歩行には用いられず
移動する際は爪を宙に浮かせて歩いていたということです。
もし、歩く助けとして第2肢の鉤爪を使っていたなら、もっと外傷があり、骨が変形してもおかしくありません。
鉤爪は相手を切り裂く武器としての役割りを重要視されてきましたが、
他の役割りに使われていたとも論じられてきました。
歩く助けをする、高いところに登る、毛をつくろうなどです。
研究社は今回の調査により、鉤爪は小動物をつかむ、大動物に切りかかる、といった役割りのほうを
重要視したようです。
これは、1体の恐竜から得た研究結果ですが、今後個体数が増えるに従って、もっとその役割りが
明らかになっていくことでしょう。
鉤爪の話題を進めてきました。
さて、皆様、後ろ肢のなかでも第二足の鉤爪はなぜあんなに上を向かせたまま
キープすることができると思いますか?
じつは、ラプトル類の後ろ肢の第二関節(ひとさし指)は、関節が丸い形をしていて
180°くらいの幅で爪を上下に動かすことができたんです。
歩くときは大きな鉤爪がおそらく邪魔になるでしょうから地面につかないよう
関節を動かして真上に上げていましたし、敵に攻撃するときは、上に持ち上げていた
鉤爪をひと振りに振り下ろして素早く切り裂いていたのです。
想像するだけで恐ろしいですね~。
今回ご紹介した新種の獣脚類「タロス・サンプソニ」は、北アメリカに住む2mの恐竜です。
2mの小型恐竜といえば同時期中国やモンゴルに生息したヴェロキラプトルが思い出されます。
また、名前の由来が「おそろしい鉤爪」とされるディノニクスも2.5~4mのアメリカに生息した小型恐竜です。
彼らも、例に漏れずすばらしい鉤爪を所有していました。
小さい彼らが白亜紀の恐竜界で生き延びるための手段として、爪に注目して進化し続けたということが
何とも面白いと私は感じます。
自分たちの体の数倍もある恐竜を、鋭い爪と速い足を特化させ襲っていく様子は、
現代の我々に大いなる魅力を与えてくれます。
「知恵を使って、大きいものを倒す」
この考え方を彼らは全身でやってのけているのです。
最大最強とよばれる恐竜に魅力を感じるのはもちろんなのですが、
最小で一見弱いのに、すごい武器を持っているという、大どんでん返しの
ストーリーを小型獣脚類は兼ね備えています。
かっこいい!と感じるのも無理ありません。
生き残るために敵を倒す、体が小さくともそれが可能な機能は何か?
賢い脳と、素早い足、そして鋭い鉤爪は、彼らが問い続け命をつなげた結果の産物だったのでしょう。
6500万年前に、彼らは地球から姿を消したのですが、現在は鳥類に多くの
要素が引き継がれています。
鳥のあの生々しいツメを見ると、何だか背筋がぞくっとしてしまうのは、私だけでしょうか。。。