隕石クレーターの上に築かれた都市「ネルトリンゲン」
本日は、隕石のお話を。
隕石クレーターの上に築かれた都市「ネルトリンゲン」ドイツ南部バイエルン州に
直径約24kmの円形の盆地「ネルトリンガー・リース」が広がっています。
別名「リース・クレーター」とも呼ばれるこの盆地は、1500万年前に直径
約1.5kmの隕石が落下して出来た巨大クレーターです。
「リース(Ries)」とは古代ローマの属州「ラエティア(Raetia)」に由来すると考えられています。
このクレーターの中心から南西約6kmの場所に直径1kmほどの都市「ネルトリンゲン」があります。
巨大な隕石クレーターの上に築かれた都市は、円形の市壁に囲まれ
中世の面影を残していて「中世の真珠」とも形容されます。
「ネルトリンガー・リース」は最初から隕石の衝突跡とされたわけではありません。
発見されてから1世紀以上にわたって様々な解釈が試みられてきました。
火山活動説や氷河による浸食説などがありましたが、
どの説も盆地の特徴を説明できるものはありませんでした。
1960年代に二人のアメリカの科学者が岩石資料より
隕石衝突のクレーターであることを証明しました。
それは隕石衝突に伴う衝撃圧によってのみ形成される
『スティショバイト』と『コーサイト』の存在でした。
コーサイトは地元石材で建設されたネルトリンゲンの教会の建築石材から発見されました。
この発見にはアメリカの航空宇宙開発局NASAも注目し、月面と
ここの地質が似ていることから、1970年代にアポロ14号と17号の飛行士と
NASAのスタッフが、この地で月面調査の訓練を行ったそうです。
ネルトリンゲンにあるリースクレーター博物館には飛行士が持ち帰った月の石が展示されています。
中世の街並が美しく残るネルトリンゲンは、映画のロケ地にもたびたび使用されています。
その1つが1971年上映のアメリカ映画『夢のチョコレート工場』です。
この映画の原作は、ロアルド・ダールの児童文学小説の
『チョコレート工場の秘密』を映画化したものです。
2005年にはジョニー・デップ主演『チャーリーとチョコレート工場』で
ティム・バートン監督によって映画されました。
※スティションバイトとは、鉱物の一種で非常に高い衝撃圧と高温(約1200℃)に
よって形成されます。
名称はロシアの鉱物学者SergeyM.Stishovに由来します。
※コーサイトとは、鉱物の一種で非常に高い圧力と約700℃の温度が
石英に加わるときに形成される二酸化ケイ素の結晶形の1つです。
※石英とは、二酸化ケイ素が結晶してできた鉱物で、中でも特に無色透明なものを
水晶と呼び古く玻璃(はり)と呼ばれ珍重されていました。