ティラノサウルス・レックスの“レックス”って何?

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 カテゴリ:化石ニュース 作者:

皆様、こんにちは。

あれよあれよという間に10月に入ってしまいました。

 

秋が駆け足で到来したかのようで、体調を季節に合わせるのに必死な今日この頃です。

 

本日はTyrannosaurus rex(ティラノサウルス・レックス / T-rexともかきます)の“レックス”のお話です。

ティラノサウルス・レックス

 

言わずとしれた、恐竜の代名詞ともなった、ティラノサウルス。

彼の名前は日本中、世界中に知れ渡っている有名人、いや有名恐竜なのですが

日本でよくティラノサウルス・レックスと呼ばれていますよね。あれ、気になりませんか?

 

恐竜の名前を上げて!といわれると、例えば「タルボサウルス」とか、「アロサウルス」とか、

1単語で答えるのに、ティラノサウルスだけは、T-rex(ティーレックス)やティラノサウルス・レックス

というふうに”レックス”という言葉の飾りがついてきます。

アジアのT-rex ことタルボサウルス

 

みなさんあまり違和感はないようですが、さて、名前のあとについている“レックス”とは何でしょう?

 

じつはこれ、世界共通の正式な呼び名なんです。

 

皆さん「学名」という言葉をご存知でしょうか?

学名とは、生物につけられた世界共通の名前のことです。

 

生物の名前に関してその昔スエーデンのリンネという学者は、国際的な混乱を避けるため、

名前は統一をしたほうがいいでないか!と提唱しました。

それで出来上がったのが「学名」です。

「学名」はそういう訳で、世界共通語にするためにつけた専用の名前なんです。

 

学名は日本語独特の「和名」とは違い、全世界で通用します。

が、世界共通語だけに表記の仕方にいろいろなルールがあります。

その中に「二名法」いう表記のルールがあるんです。

 

では、「二名法」というルールは何か?

 

さて、それを知るには生物の分類の仕方について触れておかなければなりません。

われわれヒトを含め、生物は以下のように細かい分類がされており、きちんとした名称があります。

左にいくほど細かい分類になります。

 

界・門・口・目・科・属・種(かい・もん・こう・もく・か・ぞく・しゅ)

 

なんだか早口言葉にして覚えたくなるような、呪文のような言葉です。。。

 

分類の最後は「種」になっていますよね。

種は、生物の分類上一番細かい分類になるのですが、この種の名前、「種の学名」

のことを「種名」といいます。

この「種名」が「二名法」というルールに基づいて表記されているのです。

 

二名法とは、その名の通り2つの名で構成しているんです。

左側に属名、右側に種名をかく表記方式が二名法です。

 

ここで、ティラノサウルス・レックスに話は戻ります。

もうお分かりですね!

ティラノサウルス・レックスは二名法で書かれた名前なんです。

 

要はTyrannosaurus rex の場合

Tyrannosaurus は属名で、

rex部分は種名ということになります。

 

ティラノサウルスは、日本にあっても世界の共通語であるTyrannosaurus rexの名前を浸透させて

しまったということです。

赤ちゃんが日本語を覚える前に、いきなり外国語を習ってしゃべったようなものです!

ティラノサウルスにだけ、この二名法にのっとった特別な呼び名が日本で浸透しています。

 

名前の呼び方を通じて、ティラノサウルスの人気、影響力の大きさを改めて感じます。

 

ちなみに、rex(レックス)の意味は、ラテン語で「王」。

まさに恐れ入りましたという名前ですね。

 

ティラノサウルス属として、認められている種は現時点でrex種のみです。

 

ちなみに、「種」の一つ前の分類「属」に関して、ティラノサウルスに関連して論争を巻き起こしている

事例があります。

 

アジアのT-rexとして名高いタルボサウルスは、

ティラノサウルス・バタール(Tyrannosaurus bataar)として、

ダスプレトサウルスをティラノサウルス・トロスス(Tyrannosaurus torosus)として

同じティラノサウルス属に含めようという論があるのをご存知でしょうか。

 

特に前者は形がよく似ていることもあり、同属にすべきだという学者と、別属に違いないという学者が

おり、激しく論争し合っているようです。

 

人間とチンパンジーで比較してみましょうか。

 

われわれ人間でいえば、生物の分類上では

動物界・脊索動物門・ほ乳類・サル目・ヒト科、ヒト属・サピエンス種

となります。

 

チンパンジーはヒト科まで同じで、チンパンジー属・チンパンジーと続きます。

アウストラロピテクスもヒト亜科になります。

ちなみに、ネアンデルタールなどは、さらにわれわれに近く、ヒト属までわれわれと同じです。

最後の種が「サピエン種」か「ネアンデルターレンシス種」か異なるだけです。

このくらいのザックリさで属が決まるのですね~。

 

タルボサウルスやダスプレトサウルスがティラノサウルス属に入るかは今後も注目したいところ

ですが、ヒトとネアンデルタール人でこの広い分類法ですから、まだまだ恐竜のなかにも

いろいろな種類があったのでは・・・と思いますよね。

 

もしかしたら今後の発掘や研究によって、あっと驚くティラノサウルス属が現れるかもしれません!

楽しみは尽きません。