隕石で掘った仏像の話
先月26日のことです。
皆さま、ニュースでご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。
チベットから持って帰った仏像が
「隕石」からできている、との発表がありました。
1938年ナチス・ドイツの探検隊が見つけたものです。
この仏像隕石は、
科学誌「Meteoritics and Planetary Science(隕石学と惑星科学)」で
「Buddha from space(宇宙から来たブッダ)」と題されています。
「ブッダ」と「宇宙」。
とても意味深いテーマのような気がします。。。
「アイアンマン(鉄の男)」と呼ばれるこの仏像。
およそ1万5000年前にモンゴルとシベリアの境界線付近に
落下した隕石から彫られたもので、高さは24㎝、重さ10.6kgあるそうです。
この仏像は、11世紀のチベット文化の特徴があり、
毘沙門天の座像とみられています。
それにしても、なぜ毘沙門天なのか・・・。
毘沙門天は、別名「多聞天(たもんてん)」といわれますね。
少し調べてみました。
梵名(サンスクリット語での名前)はヴァイシュラヴァナです。
「ヴァイシュラヴァナ」という音を、そのまま漢字になおす(音写する)と
「毘沙門(びしゃもん)」となります。
この意味は、「ずべてのことを一切聞きもらすことのない知恵者」
であるらしいのです。
なんてすごい意味をもつのでしょうか。。。
しかも、毘沙門天は仏教における天部の仏神だそうです。
隕石がみつかって、仏像にする際に、毘沙門天が選ばれたのが
すこし分かるような気がしました。
さて、この発見された隕石ですが、化学分析の結果、
鉄とニッケルを多く含む「アタキサイト」という
極めて珍しい隕石であることが判明しました。
アタキサイトは鉄隕石の一種です。
ニッケル含有量が13%以上で明確な内部構造をもたない隕石といわれています。
60tもある世界最大のナミビアのボバ隕石もアタキサイトですね。
この仏像隕石が彫られた年代は不確かだそうですが、
作風から推定するに11世紀以前のものだと考えられているようです。
現在のように、隕石に関する科学的な分析がなされていなかった時代です。
地球外物質である隕石を、「まさに神様からの贈り物である」と考え、
仏像に仕上げてしまったのは、想像に難くないことかもしれません。
われわれ人類と隕石の歴史がまた一つ増えたようで、
頼もしいニュースでした。